「働くママ」に知っていてほしいこと

家事と育児、そして仕事。素晴らしいです、それだけのご苦労をされているにも関わらず、「共働きの家庭は、小学校受験をする時には不利なのでしょうか?」と不安になられるの、あまりにお気の毒です。でも、知っていなければならないこと、見落としてはいけないことはありますよ。

私立の小学校受験ってこんなこともする

小学校受験の考査は、家族で臨む「面接」と、子どもだけが受けるテスト、この2つに分けられます。

そして、この子どもだけが受けるテストも、複数に分かれます。ペーパーテスト、個別テスト、集団テスト、等。集団テストの中には、運動的要素のテストや、グループで何かを作ったり、行動したりすることもあれば、単に集団ではあっても何も指示されることはなく、自由に遊ぶ、というテストもあります。

各学校によって、その手法は様々です。ここ数年は、ほとんどの方がイメージする知能テスト的な「ペーパーテスト」が実施されない、という学校も出てきました。(にも関わらず、ネット上には今も「子どもの背丈ほどのペーパーをこなさなければ、合格なんてあり得ない!」などという書き込みが見られ、閉口します)

ペーパーテストの内容は、数や量の理解、図形や絵の構成力、様々なこと、ものを推理する力、言語、季節、常識、等々、問われることは、多岐にわたります。ここでは「数」「言語」と書きましたが、決して数を数字に置き換えさせたり、言語と言っても文字を書かせたり、読ませたりするわけではありません。なぜならば、数字も文字も、「小学校に入学してから学習するもの」と文科省で決められているから、です。(極々一部の学校では、考査の一部として、ひらがなを読ませる場合がありますが、その場合には、あらかじめ出願前に必要事項として、志願者家庭に伝えられます)

中には、「お弁当と水筒を持参させ、食べる様子も考査の採点事項となる」という学校もあります。

働くママ家庭が見落としがちなポイント

例えば、数や量の理解、推理などは、あらためて教えられて理解し、学習を重ねて解けるようになる学習的要素の強い問題ですが、比較的、働くママ家庭の子ども達が苦手とする分野が「言語」「季節」「常識」などの「文化的分野」です。

このような「文化的分野」は、教えられて学ぶことというよりは、日常の家庭生活の中で自然に学んでいくもの、知っていくもの、という要素が強く、どうしても母親と接している時間に限りがある保育園児達は、このあたりに問題を抱えます。

「今さらそんなことを言われたって、仕事を辞めることも出来ないし、辞める気もないもの。仕方ないじゃない…」と諦めてしまったり、開き直ってしまうと、身も蓋もありません。こういう分野に関しては、結局は付け焼刃的な学習で教えるしか方法はないのですが、どうぞ「何が十分で、何が足りないのか?」をきちんと理解し、楽しみながら学習してみてください。

実際にこんなことがありました

これは、私が年中児クラスに在籍中の子ども達に出題し、子ども達が答えた言葉です。

実際の考査では、こういう問題は「個別テスト」として出題されると思います。個別テストとは、先生と子どもが1対1で向き合い、実施されるテストです。口頭試問的なテストもあれば、絵やパズルなどの具体物を使ってのテストもあります。

【問題1】

私:「お台所から、カタカタカタって音が聞こえて来ましたよ。さあ、あなたはこの「カタカタ」という音は、いったい何の音だと思いますか?」(これは「言語」「生活習慣」「推理」「表現」等、様々な要素を持った問題です。)解答例は、年長児クラスの子ども達の言葉です。

子ども1:「カタカタカタは、オバケかな?」
子ども2:「ちがうよ!ぼくはねえ…おなべの音だと思う!」
子ども3:「そう、わたしもそう思う!おなべの蓋がカタカタいう音!」
子ども2:「うちで『おでん』した時に鳴ってた!」
子ども4:「シチューの時も、蓋はカタカタ鳴ってたよ!」
子ども3:「カレーも鳴ってた!」
子ども2:「この間、パパがお休みの時、おでん作ってくれたの。おでんの大きなお鍋がこんなふうに鳴ってたよ。そしたらね、お出かけから帰ってきたママがパパに言ったの!パパ、おでんはこんなに強い火にしちゃダメなのよ、だって。」
子ども1:「ぼく、おでん、大好き!シチューも好きだよ!」
子ども4:「なんで強い火はダメなの?」
子ども2:「むー、わかんない。今度ママに聞いてみるね。」

子ども達の話は尽きません。子ども達は、この「カタカタの音」について「教えてもらった」のではなく、普段の生活上の経験から、「生きた理解」をしていたのだと思いました。だからこそ、話しが尽きず、いろんな話しに派生し、とても楽しそうでした。

何てことなく話しているように思ってしまうことですが、実際には、子ども達が普段の生活の中で気づき、不思議に思ったり、疑問に思ったりして、時には教えてもらい、時には自分の感性でいろいろと感じ、考えていることの披露、なんですね。

【問題2】

これは、3年ほど前までポピュラーだった問題です。なぜ3年前まで、なのかは後で説明をしましょう。まずは、問題と子ども達の答えからご紹介しましょう。

私:「この絵に描かれた女の人は、じつは大きな声で独り言を言ってるのよ。どんな独り言を言ってると思うかな?」

私が見せた絵の説明をしましょう。

その絵には、お母さんと思しき女の人と、物干し竿に干されたシャツと靴下、ぽつぽつと降り出したように見える雨、が描かれています。女の人は、下足のスリッパ(庭用?ベランダ用?)を片方だけ履いていて、もう片一方のスリッパは、絵の奥で裏返しになった状態で描かれています。

子ども1:「やだー。お洗濯が濡れちゃう!」
子ども2:「あら、雨!天気予報では、雨って言ってなかったのに…」
子ども3:「おっとっと!スリッパ、スリッパ。まっ、いいわ!洗濯がぬれちゃう!」

この絵は、急に降り出した雨に気づいたお母さんが、驚いて洗濯物を取り込む、という絵だと思います。あまりに慌ててしまい、上手くスリッパが履けなくて、結局、洗濯物を取り込む方を優先した、のでしょう。

洗濯物が干された場所が庭であれ、ベランダであれ、日頃から「洗濯、干す、取りこむ、取り入れる」という様子を目にしている子ども達には、それほど説明が難しい条件の絵ではない、と思います。
 そして、お母さんと思しき人の独り言は、上記のように「慌てている様子」「濡れないように、洗濯物を取り込む」という状況時の言葉になっています。

しかし、働くママ達の家庭の子ども達の場合はどんな様子だったか?

ちょっと自信なさそうに「お洗濯が濡れないように…かな。」と答えてくれます。さすがに、年中児の年齢になると、自分の家で「これと全く同じ状況のこと」を経験していなくても、しっかりと絵を見れば、この絵の意味していることがさっぱりわからない、ということはありません。

でも、「この時、どんな独り言を言っていると思うか?」という質問には、なかなかリアルなセリフは戻ってはきません。

「何ていうかなあ… わかんない。だってー、うちはお洗濯を外には干さないよ!乾燥機で乾かすよ!」という子達。「外なんかにに干したら大変でしょう?会社に行ってる間に、雨降ったら濡れちゃうもん!」

ここ数年で急速に増えたのが

「ママはね、夜寝るときにお洗濯をして、お風呂乾燥するんだよ。」
「夜にお風呂に干して、朝、ママは和室に乾いたお洗濯物を積んでいくの。帰ってきたら畳むんだよ。」

こういう子ども達です。

確かにそうですね。今では、ママにお仕事がある、なし、関係なく、お洗濯は外には干さず、乾燥機やお風呂乾燥を利用するご家庭がとても多くなってきていますね。

…ということで「これは、3年ほど前までポピュラーだった問題です」ということにつながるわけです。とは言え、こういう様子を含んだ問題は他にもあるかもしれません。そして、それは働くママのご家庭にとって、思いもかけない「落とし穴」となる。ですから、なるほど、そういうことがあるかもしれない、と、わかっていてくださいね。