「知識」よりも「知恵」を

受験産業に毒されてしまった親たち

世の中では早期教育が大流行。知育も外国語習得も、少しでも早くに始めるほうがいい!という幼児相手の産業にすっかり毒されてしまった?感がある…今の時代です。
決してそういう知育や外国語教育を否定しているのではありません。しかし、1歳には「1歳の時にすべきこと」、2歳には「2歳の時にすべきこと」があり、それをなおざりにしてしまうことは、真っ当な成長に大きなマイナスの影響がある、ということを知っていなければなりません。前倒しの早期教育がある意味、親の虚栄心を満たすため、親の自己満足のためとなっているとすれば・・・その代償は大きいです。

人はみな、タンスを持って生まれる

人が生きていく上で必要なものは、すべてそのタンスの中に入っている、と考えてみてください。 シンプルな造りのタンスや、装飾のたくさん付いたタンスや、渋いタンスやカラフルなタンス、等々、そのタンスはどういう家庭のどういう両親のもとに生まれてきたか?によって違います。
人が生まれた時には、タンスの中には必要最低限の、誰もが持っているものが入っていて、「こんな時には泣けば良し。こんな時には、こういう泣き方が有効とか、母乳の飲み方はこうだ」そういう本能的なものしか入っていません。そしてそのタンスはまだ小さく、頑丈ではありません。なので、まだまだ頑丈さに欠けるタンスを丈夫にし、大きくしていくこともが幼児期の親の役目です。
そして、子ども達は成長とともに、日々の生活の中から、また親が与えてくれた様々なチャンスから、その「タンス」の中に、どんどんと中身を入れていく… 入っていくもの、入れていくもの、それが「知識」だと思います。

でも!知識を入れていくばかりで良いのでしょうか?

とても素晴らしい道具をたくさん持っていたとしても、その道具の使い方がわからなければ、その道具は意味を成しません。
タンスの中に知識がどんどん増えていっても、それをどのように使うか?がわからないのでは、使えません。
幼児期の親の役目とは・・・
*これは、こういう時につかうものだけれど、こんな使い方だってできるよ、と教えてあげること。 *どの引出しに、どんなものを、どんな順番で入れていくのが良いのか、を教えてあげること。 *この引出しの「これ」と、この引出しの「これ」を合わせて使うと、こんなことが出来るよ、こんなことがわかるよ、と教えてあげること。
これが「知恵」であり、知恵を育てていくことが、真の成長、賢さを育むことなのだ、と考えています。
幼児教室マナーズ は、徹底した少人数制。それぞれの子どもの個性や特性を理解した上で、クラスを進めています。長年、多くの子ども達を育ててきた「まどか先生メソッド 」は、家庭での親子の関りを学ぶテキストでもあります。
つまり「知識」を詰め込むばかりではなく「知恵」を育ててあげることこそが、大事なリードの仕方だと思うのです。ひたすらどんどんと中身を入れたがり、タンスの中は知識であふれかえってしまい、気づけば知識が増えていくことにだけに喜びを感じている、そんな気がしてなりません。

知識先行の笑えない「笑い話」

これは、ある日の「年中児クラス」での事ひとこまです。
まどか先生「お父さんやお母さんと一緒にデパートにお買い物にいきました。ところが、おもちゃ売り場で欲しいおもちゃに見とれているうちに、あなたはお父さんやお母さんとはぐれてしまいました。ひゃー、パパやママがいなくなっちゃった、ってわけよ。そう、迷子になったのね、あなたたち。さあ、どうする?」

Aちゃん「迷子になったんだから、おまわりさんに言う!」
まどか先生「なるほど・・・でも、デパートのそこの売り場に、おまわりさんはいるかしら?」
Bくん「おまわりさんはどこにでもいるわけじゃない、まず交番を探す!」
まどか先生「そうね、おまわりさんは交番にいるのよね。でも、あなたたちは今、デパートにいるわけでしょう?デパートの中で迷子になってるのよ。もう一度考えてみてえ。」
Cくん「むー、わかった!大人の人に家の住所を言う!ぼく、住所は言えるもん!」
Dちゃん「ちがう、住所じゃないよ!ママのスマホの番号を言うんだよ!」
まどか先生「ほー!じゃあ、ママのスマホの番号を大人の人に言うのね。どんなふうに言えばいい?その大人の人に、突然『ママのスマホの番号は090・・・って言ったら、その人、びっくりしない?まずは、どんなふうに言えばいいかしら?』
Aちゃん「なんで?ママは、迷子になったら、おまわりさんに言いなさい、って言ってたもん!」
Bくん「ねえ、まどか先生。交番って、どこにあるの?デパートにはないの?」

いかがですか?なかなか「深い内容」だと思いませんか?

困った時にはおまわりさんに言う。
おまわりさんは交番にいる。
自宅の住所を言う。
お母さんのスマホの番号を言う。

すべて、お父様やお母様に教えられたことをしっかりと覚えているからこそ、こういう答えが出てきました。
ひとつひとつは、とても素晴らしいです!立派です!
この会話の後、お父さんやお母さんに教えてもらったことを、一生懸命に覚えたことを誉めました。でも、せっかく覚えたことを「どのように使うか?」「どんな時に役立てるか?」です。このカリキュラムは、「知識」を「知恵」として働かせることを学ぶためのものなのですが、ご理解いただけましたか?

「タンスに知識をたくさん入れる」ことも大事です。でも、そのことだけに一生懸命になるのではなく「知恵を働かせる」ことにも着目しましょう。たとえ幼い子ども達でも、そのシチュエーションに応じたイメージを持ったり、考えたりすることは出来るのですよ。その中で、新たな疑問や発想が生まれ、子ども達はまた、そこから成長していきます。