どんな「準備」をするべきか

時代とともに変化した受験

 
今から25年前、私が熱い思いとともに開校した幼児教室マナーズ、当時は子どもたちに受験勉強のためにドリルやペーパーをやらせ、泣かせてでも難題・難問を解かせ、成績や点数といった数値で計ることのできる優秀さを追及しておりました。そしてこの詰め込み式の受験準備は当時の主流でもありました。そのため、チックになってしまう子ども、頻尿になってしまう子ども、どもるようになってしまう子どもが大勢おり、とても悲しい時代でした。

事実、当時の小学校入試は、もちろん面接も重要な要素ではありましたが、ペーパーテストの重要性もとても高く、親が子に必死にペーパーをやらせるという構図も理解できないわけではありませんでした。
そんな時代から、時は21世紀へと移り、平成から令和の時代へ。

あれから20年以上もの歳月が流れましたが、悲しきかな、小学校受験準備は昔と何ら変わることなく、今でも難題・難問にも難なく対応できるように、たくさんのペーパーを解かせ、そして「それこそが小学校受験の準備だ!」と言わんばかりに躍起になっているご家庭が何と多いことか。

でも、それは間違っています。

現在の考査でも確かにペーパーテストはありますが、あくまでもそれはテストの中の1分野でしかありません。ペーパーテストは「考えるための一つの媒体」なのです。ですから、今では決してそれが「主となるテスト」というわけではなくなりました。

近年は、「グループでの行動観察」「グループでの作業」「個別のテスト」「運動」「絵画、巧緻性」「自由遊び」そして「面接」等々、いろんな考査内容から、子どもの人柄、特性、様々な力を見抜き、判断をするテストになっています。中には、ペーパーテストを実施しない、という学校もあるのです。

そんな時代になっているのだから、受験準備の大半を「ペーパーテスト対策」に割き、親子で一喜一憂をするのではなく、普段の家庭生活の中で「いろいろな力」を育んであけましょう。

幼児期に学ばなければいけない「力」

ここで言う「いろいろな力」とは、「特別な能力」という意味ではなく、あくまでも「力」です。暮らしの中で必要になるいろいろな力です。コミュニケーションのための「話す力」「聞く力」「表現する力」、人とのつながりを円滑にさせるための「我慢する力」「待つ力」「まわりを見る力」、成長していくための「覚える力」「考える力」等々

子ども達は、当たり前の日々の暮らしの中で、こんなふうにいろいろな力を必要とされています。そして、それら力を家庭生活や幼稚園、保育園生活の中で学んでいるのです。

良くも悪くも親や大人たちから「強いられて学ぶ」という生活は、小学校に入れば当然のこととしてやってきます。もちろんこういう「読み書きそろばん」的な「座学」も重要です。しかし、就学前の幼児期には、その時期にしか学ぶことのできない、学ばなければならない、多くのことがあるのです。決してそのことを忘れてはいけません。

この幼児期の学びとは、新しいことを知り、学び、ワクワクできる学びです。本来、学びとはそういうものなのです。

大人でも子どもでも、興味津々でわくわくしながら取り組めることには思わず夢中になれるもの。そして、何かに一生懸命に向かえば、真面目に「取り組む姿勢」も育ちます。真面目に取り組めば、やり遂げられることも多く、そこにはやり遂げた時の達成感も生まれるでしょう。この達成感は、すべての原動力となり、また学びへのワクワクとなり、学ぶことへの前向きな姿勢になるのです。こういった好循環が、子どもの「やる気」を育んでいきます。

 「強いる学び」では、残念ながらこの好循環は生まれないのです。

受験することを子どもに伝えなくてもいい

 

受験準備を始める時、両親は総じて興奮状態にあります。「これから受験だ!大変だ!がんばらなくちゃ!」と。この一種の戦闘態勢とも言える緊張感が辛いので、多くの両親達は必死に我が子に伝えます。

「あなたはね、私立の小学校受験をするから、これからお勉強をするのよ」
「パパもママもがんばるんだから、あなたも頑張らなきゃダメよ」
「あなたのためなんだから、一生懸命になりなさい!」等々

しかし、どうでしょう?

受験云々という以前に、幼稚園、保育園を卒園したら行くことになるという小学校が何なのか、どんなところなのか、それが全くわからない子ども達に、こんな悲壮感のこもった説明をしたところで、子ども達には理解できません。

私は長年、「子どもを相手に小学校受験準備とはについての説明をする必要など全くありませんよ」と伝えてきました。

親としてしっかりと伝えるべきことは、こういうことだと考えています。

「今までのあなたはね、まだまだ小さかったでしょう?生まれた時なんて裸んぼで、一人でご飯も食べられない、おしっこだって自分で行けなかったの。そうでしょう?でもね、あなたはこんなに大きく、おりこうさんになったのよ。せっかくこんなに大きくなって、いろんなことを考えられるようになったのだもの。その賢いあなたの頭を使って、もっともっといろんなことを考えてみましょうよ。その賢い頭は使えば使うほどもっともっと賢くなっていくんだって。素敵でしょう!だから、たくさん考えて、いろんなことをやってみましょう!」

きっと、子ども達はワクワクと聞いてくれるはずです。成長している自分、賢く育ってきている自分をあらためて認識した子ども達は、必ず嬉々として自らの意志で、何事にも取り組むように育っていってくれるでしょう。

「学びとは、本来、楽しいもの」です。

両親の意識ほど大事なものはありません。

両親が最初に子どもたちのボタンの掛け違いをしてしまうと、ずっとずっと違った方向にいってしまいます。どういう受験準備をするか、どういう教室を選び、どんな方法で受験に向かうか?それは、両親の好みです。

でも、どんな方法をとるのであれ、大事なことは、「日々の生活を大切にし、その中での驚き、気づきを一緒に感じること」です。