数値には置き換えられない世界観

現在、首都圏内には90数校の私立小学校があります。
創立100周年を超える学校もあれば、誕生してやっと2,3年、という学校もあります。大学が母体となった大きな傘下にある学校もあれば、小学校のみという小さな規模の私立校もあります。
そして、そのすべての小学校には、その学校を創立された方の、企業の、「建学の精神」というものがあるのです。

創立して何年が経過したか?という意味だけで考えれば、公立小学校でも、ゆうに創立50年を超える学校だって数多くあるでしょう。しかし、私立校と公立校の違いとは、その学校の「成り立ち」です。
公立の小学校は、そのほとんどが市区町村の管轄下にあり、創立に関しても、その地域に初等教育の場が必要となったから、という理由で、その地に創立されました。公立小学校に「校訓」と掲げられたものがあったとしても、それは私財(企業の資産)を投じ、人育ての高い理想を掲げて開校された私立校の校訓とは、かなり意味も重さも違います。
この時点で、その小学校の「存在の意義」自体が、私立と公立では大きく異なり、どちらも「教育の場」という意味では同じなのに、こういう「成り立ちの違い」によって、大きな違いが出てくる・・・ こういう点に関しては、「私立と公立」をご参考にしてください。

理解に苦しむ「私立」小学校

ここに集めたのは「初めての小学校受験」に臨まれたパパ、ママが理解不能で困られた時のお話、メールです。ご承諾を得てましたので、紹介しましょう。
お父様A「正直、異次元に入り込んだ気分でした。その日の気温は30度で真夏を思わせる暑い日だったんです。妻にせがまれて行ったそのカトリック校の説明会の会場は後ろから見たら紺色一色なんです。平日なのに、お父さんの姿もチラホラあって、いったいなんだこりゃって思いました」

お父様B「みんな、神妙な面持ちで。講堂にはたくさん人が入っているのに、校長先生が現れたら、急にみなの緊張感が空気になってね。帰り際も出口に立ってたおられた校長先生に、みなさん深々と頭を下げて。実際、まだ我が子が入学するかどうかもわかんないのに。なんか、わかんないです、正直なところ」

お母様A「うちは女の子だから、この大学までの一貫校に興味を持ったんですけれど、下の子は男の子だから、娘と同じ学校に行かせて、中学からはもっと偏差値の高い別の中学を受験させたいんです。確認と思って、質問をしたら、お返事がはっきりしない・・・それに、まわりにいた説明会参加者達が、私に急に冷たい視線を送ってきて・・・何なの?って思いました。よくわからないです。」

こんなふうに正直に話してくださった3名の方々は、みな首都圏以外のご出身で、似たような経歴をお持ちでした。とても分かり易い「偏差値社会」の中で教育を受けてきた方々です。

人は誰でも「経験のないものごとは、なかなか理解できないもの」です。どんなに「〇〇屋のスフレは美味しい!」と絶賛されても、スフレが何かわからず、スフレを食べたことがない方にとっては、その情報はチンブンカンプン。これと同じことです。

この3人の方々の、今までの人生での「学校のバロメーター」は、きっと偏差値のような数値であり、そういう分かり易いものでほぼすべてを判断されてきたのだと思います。実際にそれで十分に通用したからです。

しかし、首都圏の私立小学校は、数値でには置き換えることのできない世界観、価値観があるのです。理屈ではありません。ただ、「そういうものがあるのですね」と、批判や批評をせずに、「なるほど、なるほど。今の年までしらなかった世界を見せてもらえるわけだ」と、受け入れ、楽しんでいただきたい、それが私の願い首都圏の私立小学校の世界です。

幼児教室マナーズ では、子どもの準備と並行して、ご両親にも「準備の一環」として、いろいろなお話、アドバイスをいたします。疑問や不安を残したままでは、決して前進はできません。

この3名の方々のお子様達も、私立小学校に進学されました。1年が過ぎ、2年が過ぎ、お母様Aがしみじみと話してくださったことは・・・
「まどか先生、今思えば、初めて学校説明会に行った頃の私には、東京や神奈川の私立小学校を理解するような価値観自体がなかったのですよ。私が育った町では、中学まではみんな一緒。ワーワー言いながら自転車に乗ったりして通学して、高校受験の時には成績によって進む学校は違ってきますが、それは分かり易いじゃないですか。高校になって初めて電車通学になってね。ははは、うちの子は、私よりも9年も早くから電車通学ですよ、優秀、優秀」

自らの経験に裏打ちされないことであっても「受け入れること」からしか始まらないこともありますね。私立の小学校受験では、どうぞ、五感、感覚を駆使して「そうかあ、なるほどねえ」を増やしてください。そうしているうちに、ご両親も「その学校を構成する一員」となり、子ども達が卒業した後も、その学校の伝統を築き、守る存在となられます。