「受験準備」に溺れてはいけない

受験準備教室の独特の空気

小学校受験のお教室には「独特の空気」があるようです。そもそも「教室」ではなく慣習的に「お教室」と呼ばれ、それはまるで「お受験」という言葉同様、そこからすでに普通ではありませんよね?

みなさんがその「お教室」に問い合わせをし、入室体験や教室見学等をされたならば、きっと人を緊張させるような、そういう空気を感じられたのではないかと思います。

受付の壁に貼られた私立小学校のポスターや合格者の声などの掲示物、昨年度の合格者数。それに受付の方の笑顔、通ってきている方々のにこやかさ。でも、どこかそれが「意図的に作られたもの」と感じてしまうような緊張感。

相談者の方々は異口同音におっしゃいます。

「受験を思い立った時には、初めての世界に緊張はあるものの、楽しく準備を進められればいいなと思っていたはずなのに、気が付けばいつ圧迫されるような雰囲気に包まれて、息苦しくなっていく。すると今度は自分自身がそういう息苦しい気分に負けないぞ!もっともっと頑張らないと!と思ってしまう」と。

こういうことをおっしゃる方も多いです。

「お教室では毎回、そこに集う親子達が醸し出す張り詰めた空気に煽られるし、担当の先生の叱咤激励に大きく反応している自分にも動揺する。家庭では、山ほどある宿題をさせるのに精一杯で、何度も同じ間違いをする我が子を怒鳴りつけ、子どもは泣き、私はイライラして、悪循環を繰り返している。フッと冷静になった時には、こんなはずではなかった、とか、私達はちょっとおかしな状態の中にいるな、とか、普通じゃない自分を感じることもある」

ブレーキを踏む勇気を持つ

こんなふうに自分で自分のおかしさに気づける人はいいのです。もし、そんなふうに思った時には、必ずしっかりとご自分でブレーキを踏んでください。ここが正念場です。

多くのご家庭では、おかしなことになっている自分、鬼の形相の自分、泣き顔の我が子に気づきつつも、「今ここで止まってはいけない!」などと不思議な興奮状態に陥り、ブレーキを踏むどころか、自分を叱咤激励して、どんどんと受験準備の深みにはまっていってしまうのです

こんな時、正直に「あなた達はおかしいですよ!危ないですよ!注意注意!」と、ブレーキを踏むアドバイスをしてくれる人がまわりにいればいいのですが、大抵は「もっとがんばりなさい!」「ママがもっとがんばらなくては!」などと急き立てられ、煽る人のほうが多いのが今の受験の悪い面です。

当然、親子でこうした受験準備の悪循環の中にどっぷりとつかってしまったら、子ども達の中にはチック症状が出たり、吐き下しをしたり、頻尿になってしまうというような、目に見える悪影響が出てくる場合もあります。ここまでならなくても、幼稚園や保育園でお友達に辛くあたったり、暴言を吐いたり、落ち着きが無くなる、というような状態がみられることもあるでしょう。

これでは本末転倒ですよね。愛する我が子のために、良い教育環境を求めて、私立小学校受験をしよう!と思い立ったはずなのに、親が間違ったリードをすることによって子どもを不幸にしてしまっている、こんな悲しいことはありません。

自分を見つめる目を持つ

小学校受験準備には摩訶不思議な世界観があるようです。特に多くのお母様達がおっしゃるのは「まわりの親子が自分達よりもずっとずっと優秀に見える」のだそうです。でもね、どんなにスマートに見える親子にも、どこかスマートに映る親子も、実際には「みんな同じような不安や悩み」を持っているものですよ。

たとえば…

名門校・有名校・伝統校、と呼ばれるような学校のご卒業生である父親や母親であったとしても、卒業生であるが故のプレッシャーを抱え、不安でいっぱいです。すでに、上のお子様が私立校に在学している家庭では、第2子、第3子は、絶対に上の子と同じ学校で学ばせてやりたい、同じ学校に入学させてやらなくては、という強迫観念に苛まれているものです。そして初めて受験に向かわれるご家庭は、右も左もわからない世界の中でインターネットの掲示板や他のご家庭との情報交換に疲れ、何を信じてよいのかわからない、と悩んでいる…

いかがですか?

だれもが、それぞれの悩みや不安を持って、受験準備に臨んでいます。

小学校受験の準備というものは正しい準備の仕方さえすれば、幼い子どもの脳を刺激し、様々な意識を育て、日々の暮らしで必要となる様々な力を身に付けさせるとっても価値あるものです。

私立小学校という教育環境に一度も興味を持ったことがない人達は、独り歩きする「お受験」という造語のイメージから「つまらないもの」「わけのわからないもの」と批判的な目を向けられます。それはとても悲しいです。しかし、確かに、親子で受験準備と称して暴走し(暴走させほうにも大きな罪があるとも思っています)、多くの母親がカリカリやメソメソと精神的にまいり、子どもの心身に悪影響を及ぼしている現実を思えば、巷で嘲笑されても仕方がないでしょう。

あなたの受験準備が正しいものであれば、決してお父様やお母様が正常な判断力を失ってしまうような煽られ方をすることはありません。

もし、「もっとがんばらなくていけませんよ!」と言われたとしたら、是非、しっかりと考えてみてください。もっとがんばりなさい、と注意を受ける正当な理由があれば、やっぱり努力が足りないのかもしれませんね。何事も「楽をして実らせようとする安易な思い」は間違いです。受験準備に限らず、何事も「がんばること」は尊いことであり、それは、親が我が子に教えるべき、大切な「物事に立ち向かう姿勢」ですから。しかし、親子で十分な努力をし、真摯に準備に向かっているのに、それでも「もっともっと!」を言われるとしたら、それは「叱咤激励」ではなく、単なる「煽り」です。

ときどき立ち止まり、今の自分を客観的に見てみる、そういう冷静な姿勢は必要です。

受験準備を始めたら、やはり一生懸命に取り組まなければなりません。けれど常に「行動や言動を冷静に見ることのできる自分」でいられればいいですね。そして、子どもが寝た後は、自分の一日の行動を振り返り「一人反省会」をしたり、「自分を誉める会」をして、無理をしてでも、ゆっくりとお茶を飲み、ほっと深呼吸をする時間を作ってください。

一人反省会をした時、「大丈夫!私は正常。私は普通。受験準備で暴走なんてしていない。おかしいところはないわ!」と笑顔で思えれば、大丈夫。もし、少しでも「むー、私、ちょっとおかしくなってるかな?」と思ったら、ブレーキをかける勇気を持ちましょう!