中高一貫校を考える

首都圏では、「中学受験」が広く一般に浸透してきました。その大きな理由は、 中高一貫校が増加してきたことにあるでしょう。中学、高校と細切れの教育をするのではなく、高校までの6年間を一つのスパンとして考え、 教育をする、ということですね。そして、中高一貫校では、だんだん高校からは生徒を追加募集をしない、という私立校も増えてきています。

中高一貫校は、大別して3つの傾向があるように思います。
「偏差値重視型」は、6年間の教育を大切にしながらも、さらにその先にある大学受験に照準を合わせ、 有益な教育を展開する学校。
「人間教育重視型」は、高校受験、大学受験に翻弄されることなく、 ゆとりある時間の中で、さまざまな学習、経験を通して、 人間教育に力を入れる一貫校。大学の付属の中高一貫校 にこういう傾向が強いです。
最後が「中道型」です。当然、この中道型が最も学校としても数が多く、これを希望する家庭も多いと言えるでしょう。

我が子に中学受験を!と考える家庭が、どういう中高一貫校を目指すとしても、必須なのが「中学受験」です。

なぜ中学受験のために私立小学校を志望するか

幼児教室マナーズの生徒の中でも、ここ10年「中学受験を視野にいれるからこそ、教育環境の整った私立の小学校を志望する」というご家庭が増えています。また、私立校の中には、小中高12年間の一貫校であっても、中学受験を奨励する学校も増えてきました。

昔は「私立小学校受験をする」と言えば、たいていが小中高(大)の一貫校を受験する、という意味であり、昭和の時代的な言い方をすれば、「エスカレーター式の学校で、各段階での入学試験に翻弄されることなく、ゆったりとした学校生活の時間と経験を与えてやりたい」という家庭がほとんどでした。
しかし、今では、私立校も多様化し、各家庭の考え方で私立小学校を選べるようになってきています。

ではなぜ、中学受験をさせたいと考えるご家庭が私立小学校を望むのでしょうか?

公立小学校の在学生には、様々な考え方を持ったご家庭の子どもがいます。小学校入学当初から「我が家は、6年後には中学受験をさせる」と決めているご家庭もあれば、 熱心に少年野球や少年サッカーなどに取り組み「スポーツの時間が最優先」というご家庭もあります。また、 淡々と義務教育である小学校生活を送っている家庭もあります。

このように、家庭の考え方が様々であれば、当然、その家庭の子達の日頃の生活のリズムも違ってきます。
中学受験準備をする子ども達は、 大抵が3年生の2月になれば、中学受験準備のための塾に通い始めることになります。そして、高学年になればなるほど、放課後に塾に通う回数は増えていきます。

そういう現状を良しとせず、公立小学校の中には、中学受験塾に通う生徒には、運動会のリレーの選手や行事の特別な係には選出しない、ということもあるそうです。それは、 塾に通う子達は「塾優先で、練習や話し合いに参加できないから」というのが理由だそうです。

どんな人にとっても「まわりと同じ」「同じ環境にいる」というのは、非常に居心地の良いものですね。全員が歩いている中で一人だけ走るのはちょっと辛い、全員が右を向いている中で一人だけ左を向くのは目立つしちょっと恥ずかしい、全員がサンドイッチを食べる中でおにぎりをほおばるのはちょっと居心地が悪い。

ということで、それぞれの卒業後の教育設計が雑多な環境である「公立小学校」に我が子を置くよりも、最初から、全員が中学受験をする、という学校で学習に励むほうが、子ども自身も「中学受験は、当たり前のこと」として受け止められるのではないか?全員が中学受験をするという環境では、教育内容も、少しは中学受験を視野にいれた配慮もあるのではなかろうか?等々、このようにご家庭は考えるわけです。

塾と学校、塾選びと学校選びは違う

しかし、ほぼ全員が中学受験をする学校(たとえば、女子は中高があるけれど、男子には中高は併設されていない、というような学校)の場合も、 そこは「塾や予備校」ではなく、あくまで 小学校であることは忘れてはいけません。
小学校の6年間は子どもが大きく成長する時期です。容姿も含め、まだまだ幼稚園児の雰囲気を残した1年生から、男女ともにすでに大人の体つきになっていく6年生までの年月。ここまで劇的に心身共に成長していく6年間の学校生活は、中学でも、高校でも、見られることはありません!そんな大切な小学校生活を、「中学受験をするために有益な環境」という理由だけで私立小学校選びをして良いはずがありません。

幸い、首都圏には、多くの私立小学校があります。「我が家では、子どもに中学受験を経験させ、中高一貫校に進学をさせたい!だから、その展望に沿って、全員が中学受験をする私立小学校を目指すことにしよう!」という理由で小学校受験をすることを決めたとしても、志望校選びは慎重に!が基本です。
幼児教室マナーズでは、まどか先生メソッドによる子ども達の準備と並行して、ご両親との会話、関係を密にしています。そういう関係が、ご両親の考え方や志向に沿った適切なアドバイスに結びつきます。志望校選びにも時間をかけ、正しい方向に向かうことは何よりも重要です。
私立小学校には、創立時から脈々と続く教育の信念があります。建学の精神です。
たとえそこが、小学校の6年間のみの私立小学校だとしても、その学校には、確固とした教育理念、教育方針があり、毎年、多くの卒業生を輩出してきた伝統ある私立小学校です。決して、中学受験のための「塾選び」のようなお気持ちで小学校に向かってはいけません。中学受験は中学受験。小学校は小学校。我が子にとって、最高の教育環境をあたえてやりたい!という思いを大切にし、真摯に学校に相対する姿勢を忘れないことです。